漫画メモとか

漫画の感想を書いてみたり。 割と何でも読むので、感想希望なものがあったら教えてください。読めたら読みます。

小説

クリスボイス著「キャッチワールド」

クリスボイス著「キャッチワールド」

キャッチワールド (1981年) (ハヤカワ文庫―SF)









1975年の著作、ハヤカワSFなのですが、人に勧められて読みました。
読み終わった後の感想としては、なんだかよくわからなかった、っていうものです。

とにかく多くのアイデア、情報などがしれっと普通に書かれており、それらを読み飛ばしつつ先に進んでいくのですが、着地点も想像できず、何がしたいのかも所見では想像できませんでした。
主人公が誰なのか、という点も、恐らく田村艦長だとは思うのですが、群像劇でもない、ヒーローものでもないつくりになっています。

以下、ネタバレ注意


といっても、ネタバレになるのかすら全く分からない。
読みたい人はまっさらな状態で読んだ方が良いと思うので、ネタバレの方は読まない方が良いとは思います。

メインの登場人物は、近未来に生きる武士なんだか僧侶なんだかよくわからない、とてつもない精神力、武力の田村。
しょっぱなからアイエエみたいな世界観がガンガン入ってきますが、ここに関しては実は後半には全く紐づいていません。
しいて言えば世界観の肉付けと、物体、物質的な世界観の強調なのかと。

そして物語の中核は宇宙船内。
謎の敵から攻撃を受けた地球は、反撃に出るため宇宙船を建造。主人公田村が艦長の船を含む数隻でアルタイルに向かいます。
その向かう先で、マシーンインテリジェンス(要するにAI)との統合があります。
このあたりからこれは宇宙戦闘の小説ではなく、人間やその精神とはなんなのか、みたいな部分に突入します。

そして後半になり、一気に話が進みます。

宇宙船や恒星間移動などのSF要素、そしてAIとのやり取りなどを経て、AIに統合されていく田村たち。
1人残されたアラエディス。
魔術やESP、古代の黒魔術みたいな話も絡み合い、大自我、そして超越する存在「鴉」へと話は登って行く。


と、ここで終わるのかと思いきや、やっぱり一人取り残されたアラエディスを主として、敵であるアルタイルの星に到着します。
読み終わった当初はなんか蛇足的だな、とは思っていたのですが、そもそも鴉と統合の話は比較対象が存在して始めて浮き彫りになる。
の、比較対象がアラエディスであり、大きな流れ鴉にキャッチされている存在が、実は多岐にわたっているということを表すものになっているのかな、と。

ただ、色々なSFの基礎みたいなアイデアがふんだんに入っており、1つ1つでも1冊成立するようなアイデアがちょいちょい出てきます。
黒魔術とその背景とか。

物質的→人々のやり取り→精神的な世界→大自我と統合→超越

そんなひも解き方をすると、もうちょっとちゃんと読めたかなと思います。

小松左京著「果しなき流れの果に」

小松左京著「果しなき流れの果に」

果しなき流れの果に (ハルキ文庫)










言わずと知れた、小松左京の名作。

緩やかなスタートから、中盤以降の怒濤の展開。そしてなんかもういろいろと超越して、読者に宇宙的な何かを見せる後半。

SF の色々なアイデアを盛り込むも、これらはあくまで舞台装置であり、物語の根幹は人と人の出会い、別れ、そして生き様などに集約していきます。


以下、激しくネタバレ注意

絶対に、本作を読んでからにしてください。

果しなき流れの果に (ハルキ文庫)
小松 左京
角川春樹事務所
1997-12-01




特定のキャラクターに感情移入しすぎないよう、群像劇の様相を持ちながら、基軸となる話もちゃんとある。

特に佐世子の下りは秀逸で、予想できたものの角度の違うハンマーで殴られたような読後感です。

個々のエピソードは時代と共に流れ行き、それらはその時代を構成するネジの一つとなって心に残る。

そして時間とは何なのか、高次元の頂きにいつの間にかたどり着いています。

読み終わったあとの心地よい疲労感と、何だか遠くまできたな、という後味。

子供の頃、自転車で知らない街まで遠出して、知らないところで夕日を迎えたような感じでした。


果しなき流れの果に (ハルキ文庫)
小松 左京
角川春樹事務所
1997-12-01


クリフォード D.シマック著「都市」

クリフォード D.シマック著「都市」

都市 (ハヤカワ文庫 SF 205)




実はハヤカワSF 好きなのですが、翻訳ものは読むのに体力がいるためなかなか進まないわけです。

そんなことで積んであった本から、古典SF の部類である本作をチョイス。

この話はある一族と犬と都市の話です。
話は複数の章、時代に別れています。


軽いネタバレ。

序文でいきなりネタバレするのですが、この本は犬の世界で発刊した、伝説の動物である人間に関する、言い伝えられた話と、その分析で成り立っています。

以下、ネタバレ。

都市 (ハヤカワ文庫 SF 205)
クリフォード D.シマック
早川書房
1976-09



この本はネタバレ無しで読んだ方が面白いので、まだ読んでない人は見ないでください。


はい、こっからは読んだ人だけですね。
物語はウェブスター家とジェンキンズを中心に様々な出来事を見ていく話です。
代々のウェブスターに感情移入しつつ、人間の生き様を追う。
そして主の理想を追って果てし無い時の番人をするロボットのジェンキンズ。

読み終わるとジェンキンズの悠久の生き様に感情移入しまくります。

人が集まって出来上がる都市。
時代の進化で都市の機能は風化し、そして人間も過ぎ去る。
都市が無くなることで無くなった戦争。

そしてある代のウェブスターの託した思いでジェンキンズが犬に、動物たちを導く。

宇宙、都市、ミュータント、動物たちの世界。SF の様々な要素を使って人間の営みと行く先の末を浮き彫りにする快作です。

都市 (ハヤカワ文庫 SF 205)
クリフォード D.シマック
早川書房
1976-09


宿野かほる著「ルビンの壺が割れた」

宿野かほる著「ルビンの壺が割れた」

ルビンの壺が割れた





超ネタバレ注意


正直、この作品について感想を書くと、ネタバレ以外の部分は、

・文章が凄い読みやすい、地の文無しの手紙のやりとり
・読み始めると止まらない
・読み終わると嫌な感じになる

となります。

手紙というか、フェイスブックのメッセージのやりとりです。

もし読むなら、全く予備知識無しで読んだ方がいろいろ楽しめます。
なのでネタバレとか絶対に読まない方がいいです。



ということで、ここからネタバレ注意


話は水谷からの一方的な話から始まり、読者の読み手としての拠りどころを左右に振りながら、中盤以降核心に触れていきます。途中の細かい部分に一応伏線はあるものの、読みやすさからサクサク進んでしまうため、違和感を感じながら展開していきます。

このへんが上手いこと違和感から拠りどころの操作に繋がっていて、とにかく先が気になる作りにしてます。

一方から見えている景色が、もう一方からすると違う。
ルビンの壺です。
そしてジェットコースターのように割れて行きます。

もうこの辺もお見事。

なんですが、性質上一度読むと、少し無理のある部分に目が行ってしまい、二度目はいいかなあ、となります。
キャラもわかってしまうと苦い感じで。

たぶん、壺が割れる瞬間を楽しむ作品なんだと思います。